癸卯の意味 – 2023年の干支

癸は揆であり、物事を「はかる」意である。故に揆度(きたく)とか、揆測とか、揆策などと用いる。然るに、測るには測る標準原則がなければならぬ。それでそういう「のり」、「みち」の意にもなる。(中略)癸は物事の筋道を立てることであり、その筋道が立たぬと、混乱になり、ご破算になる。これを「均(なら)す」という。日本では、政治がその道を失って自然に起こる騒動を「一揆」と称するが、うまくつけたものである。

卯は兎ではなくて、冒(おかす)、陽気の衝動であり、「茂る」ことにもなり、兎よりも茆(かや)の方である。もっとも、陽気が発すれば、兎もとび出してこようが、それは民衆に普及する手段に採ったもので、原意にはない。卯は良い意味では繁栄・繁茂であるが、悪くすると紛糾し、動きがとれなくなることを表す。

(安岡正篤  『干支の活学』より抜粋)

2022年の干支は「壬寅(じんいん/みずのえ・とら)」で、活動を大きくしていくために信頼できる仲間に任せていくこと、そして、手を取り合うことの大切さを示唆していました。続く2023年は「癸卯(きぼう/みずのと・うさぎ)を迎えます。

癸 – 筋道を立ててはかり、考え、処理する

壬寅で互いに信頼して任せたり、手を取り合ったりして活動を育てていくと、だんだんとしっかりとした道筋が必要になってくる。最初は互いの信頼で成り立っていたものに対して、規律や尺度というものが求められてくる。

そういった道筋、規律、尺度を立てることの大切さを表しているのが癸、ということになるのではないかと思います。

 

白川静は癸という字を、壬と同じく台座の一種であると解しています。

台座として用いる柎足(ふそく)の形。[説文]に「水、四方より流れて地中に入るの形に象る」とするが、金文の字形に三鋒矛(さんぼうほこ)に似たものがあり、羅振玉をはじめ、近時の研究者に兵器とするその解をとるものが多い。しかし卜文・金文の字形では、器を樹てるときに台座として用いる柎足であると思われ、木を十字に交叉して組んだ形である。これでものを度(はか)ることもあったらしく、揆とは揆(はか)ること、揆度をいう。(中略)字は十干の最後にあり、壬・癸で一組。壬は碪(砧)で、上にものを載せてたたく工作の器の形、癸は器をおく台座の柎足の形で、相似たものとして一対とされたのであろう。

(白川静 『字統』より抜粋)

十干自体はあくまで序数の記号であり、字形や字義で特別に意味付けするようなものではないというのが白川静の一貫した主張ですが、もしそうであったとしても、癸には「筋道を立ててはかる、考える、処理する」という意味が与えられており、儀式などで器を載せて、はかるという行為から意味を引き出している面もあるように感じます。

 

壬は載せたものを金属で打つための台座であり、載せられたものはまだ完成していない。それが癸になると、内容のある器を正しく載せるための台座となる。癸においては、その載せ方、つまり道筋を誤ると、物事は自然と混乱し、積み上げてきた結果をご破算にしてしまうことにもなりかねないということが示唆されます。

卯 – 陽気が衝動し、発生し、繁茂する

卯は、壬寅で膨らんできた陽気がいよいよ外に対して発することを表しています。すでに外に見える形で膨らんでいた陽気(壬)が、芽を出すような形ではなく、目に見えて茂ってくる。茆(ぼう、茅)の代表といえば、いばら、かや、すすき等ですが、その姿を想像すると、繁栄にも繁雑にもなるということをイメージしやすいのではないかと思います。

 

その字形は、生贄となる動物を割いて開いた形、もしくは、門を開く形であると考えられています。

牲肉を両分する形。卜辞に、犠牲を割く意に用いており、それが字の初義である。[説文]に「冒(おほ)ふなり」と同声の字をもって訓し、「二月、萬物、地を冒して出づ。門を開くの形に象る。故に二月を天門と為す」というのは、小篆の字形によって解するものであるが、卜文・金文の字形は牲肉を両断する形とみられる。

(白川静 『字統』より抜粋)

犠牲の霊力を発し、神に届くように両断すると考えれば、『説文解字』の「萬物、地を冒して出づ」にも通じるように感じる。いずれにせよ、卯は殻を破って、その内容が一気に外に出てくるという意味に解することができるだろうと思う。それと同時に、

いばらやかやというものは、茂って、根がはびこって、こんがらがると、どうにもならむものであります。

(安岡正篤  『干支の活学』より抜粋)

ということになります。

 

また、卯を「門を開くの形」と見ると、開いた先の地に足を踏み入れて、その未開の地を開発・開墾していくことの必要性も示唆しています。陽気の衝動を正しく伸ばしながら、畏れ慎んで、新しいチャレンジにも取り組んでいかなくてはならない。

扉を開いたその内側には今まで閉じ込められておった未開墾地がある。もちろん草木も生い茂っておるに違いない。その茅や雑草の茂った未開墾地を思い切って開発してゆくのが卯であります。

(安岡正篤  『干支の活学』より抜粋)

卯は大いに伸びて、やっていかなくてはなりませんが、それだけにこんがらがりやすい時でもあります。

癸卯 – 万事筋道を立てて処理すべき年

壬寅において大切にしてきた、「互いに信頼し、任せ、手を取り合う」という点は依然として大切ですが、癸卯の年はそれに「筋道」というものを加えていかなくてはいけません。2023年の癸卯は、

万事筋道を立てて処理していくことで、繁栄を実現し、新たに切り拓いていくべき年

ということになるかと思います。裏を返すと、

筋道を誤ると、こんがらがって、茂り、はびこった根がどうにもならなくなってしまい、混乱から動乱に繋がって、ぶち壊しになってしまいかねない年

ということになります。

 

癸卯は陽気の衝動が発する年であり、勢いがあるということは当然、混乱もありますが、その混乱に翻弄されて筋道を立てることを見失ってしまうと取り返しがつかないことになる。道理を違えずにはかる、処理するということが非常に大切な1年になると感じます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

six + 3 =