戊戌の意味 – 2018年の干支を考える

本来の干支は占いではなく、易の俗語でもない。それは、生命あるいはエネルギーの発生・成長・収蔵の循環過程を分類・約説した経験哲学ともいうべきものである。

即ち「干」の方は、もっぱら生命・エネルギーの内外対応の原理、つまりchallengeに対するresponseの原理を十種類に分類したものであり、「支」の方は、生命・細胞の分裂から次第に生体を組織・構成して成長し、やがて老衰して、ご破算になって、また元の細胞・核に還る ― これを十二の範疇に分けたものである。

(安岡正篤  『干支の活学』より抜粋)

2017年の干支は丁酉(ていゆう/ひのと・とり)、発生・成長がピークを越えて、次なるフェーズへの移行もしくは革命への岐路であり、一方で内ではあらゆる機が熟すことが示唆される年でした。2018年は、そこからの紛糾を示唆し、果断を要求する戊戌(ぼじゅつ/つちのえ・いぬ)を迎えます。

 

戊 – 陰陽が繁雑する

戊は「つちのえ」。茂に同じ。前の丁に続き、陰陽繁雑する意。(中略)樹木が茂ると、風通しや日当たりが悪くなって、虫がついたり、梢枯れしたり、根上がりしたりして、樹がいたむ、悪くすると枯れる。そこで思いきって剪定をしなければならぬ、というのが戊の意味であります。

(安岡正篤  『干支の活学』より抜粋)

「丁」において交差した「一」と「亅」、新旧・陰陽がいよいよ繁雑に交差していく様を示すのが「戊」です。白川静は『説文解字』などでも説かれる十干・十二支に基づく解釈を俗説とし、「戊」は純粋に「矛の形」であると説明しますが、ここでは十干の「戊」として見ていきたいと思います。

 

土は五行(木・火・土・金・水)で見ると中宮、ちょうど折り返しにあたります。十干では、五行のそれぞれに「え(兄)」と「と(弟)」があるため、「つちのえ(土の兄)」である戊は十干の全体で見ても中間にあたります。

ちなみに干支のそれぞれの意味を解すると、干は「幹」であり、根である。支は「枝」であり、枝葉果実です。

 

要するに、物事の成長で見ると、ちょうど幹・根の部分の発展が中間を迎えたというのが、「戊」である。これまでに蓄えてきたエネルギーや機運、あらゆるものが茂りを迎えていくことを示唆しています。

 

戌 – 繁雑の中に陽気を蔵する

戌の戊は茂に同じく、一は陽気を意味し、草木茂る中に陽気を蔵するもので、また裁成の意がある。(中略)思い切ってこれを刈り込んで、剪定をして、風通し・日当たりをよくし、根固めをするわけです。そうして初めて木が生きる。これはまだ木にそれだけの生気が残っておるからで、中の「一」はその陽気を表している。それを生かしてゆけばまだまだ続くということです。

(安岡正篤  『干支の活学』より抜粋)

戌は干の「戊」に非常に似ていますが、中に陽気の「一」が蔵されている。しかし、枝葉末節が茂っていくことを示唆する点は共通です。思い切って裁成し、この陽気を生かしていかなくてはいけない。戌の年であれば、まだ維新・一新していくことができる。

 

戊と同様、白川静は戌を十二支に用いるのは仮借で、字の本義とは関係ないとした上で、

戉(まさかり)の刀部を主とする形。[説文]に「滅ぶるなり。九月、陽气微にして、萬物畢(ことごと)く成り、陽下りて地に入るなり。五行、土は戊に生じ、戌に盛んなり。戊の一を含むに従う」とするが、卜文・金文の形は斧鉞の象、剝削(はくさく)に用いる器である。

(白川静  『字統』より抜粋)

とします。季節でいうと、戌は陽気の衰えとともに多くの実りを得る9月(新暦ではおおよそ10月)です。

 

象形としては戊・戌いずれも剪定・剝削に用いる道具であり、それは繁雑を前提とするという点で通じるものがあると見ることができるように感じます。

 

果断を以って、陽気で維新・一新すべき年

革命の岐路と見えた2017年の丁酉を越えて、戊戌の2018年は、

新旧・陰陽が繁雑に交差し、枝葉果実がいよいよ生い茂っていく中で、陽気を見定め、真剣な果断によって維新・一新に繋げるべき年

と見ることができます。干支のいずれもが「茂」に通じるのは、明らかに繁雑さ・複雑さが増すことを示唆しています。しかし、戌には陽気(一)がまだ蔵されている。

この陽気を見定める。その上で、大いに果断する。枝葉果実を刈ることが重要であるように思います。

 

2017年の丁酉の形は、案外きれいに新旧・陰陽が交わっているように見えます。しかし、交わった後には必ず混乱がある。酉の字が「醸され、熟し、発する」ことを示唆していますが、意外とそれは見落とされがちであるようにも感じます。

それを忘れずに教えてくれるところに、学問の効用があるのだと思います。

 

『貞観政要』に記された、唐初のエピソードに「草創守文」という言葉がありますが、革命には必ず破壊があります。そして、草創には草創の危難と奔走があり、守文には守文の混乱と危うさがある。

 

甲午(2014年)乙未(2015年)丙申(2016年)丁酉(2017年)と成長してきた活動を維新・一新できるかどうか。「一」を見定めて確固たる道筋を示し、次のフェーズに進み、戊に続く「己(こ)」でおのれをはっきり通すことができるかは、戊戌の年にかかっています。

2018年の干支である戊戌が発するのは、そういう問いなのだろうと思います。

 

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