丙申の意味 – 2016年迎春にあたり

「丙は炳なり」と炳の文字を当てはめてある。あきらかとか強いといかいう意味であります。文字学的に言うと、丙の上の一は思い切って伸びる陽気を表し、冂はかこいを表す。それに入という字を書いてある。陽気が囲いの中にはいる、つまり物は盛んになりっぱなしということはない、ということをこの字は表しておるわけです。生命・創造の働きというものは無限の循環であります。

申は伸と同じで、のびるという意味であります。(中略)善悪両方の意味においていろいろ新しい勢力、動きというものが伸びてくることを表す。

(安岡正篤  『干支の活学』より抜粋)

2015年の干支は「乙未(いつみ/きのと・ひつじ)」で、障害が多い中で茂る枝葉を適切に処理し、しっかりと根固めをすべき年でした。そこから発展する2016年の干支は「丙申(へいしん/ひのえ・さる)」です。

しっかりと根固めがなされたことにより、ぐんぐんと伸びる(あるいは根が腐り、とめどなく枯れる)。しかし、伸びっぱなしではその陽気を活かすことはできません。

 

丙 – 陽気に形を与えていく

「乙未」の乙は伸びる力を抑える障害を意味していましたが、その障害に耐えることで、丙では陽気があきらかに発達してくる。

一方で、未は枝葉の茂りゆく形でいわば伸び放題だったわけですが、その伸びる力に形(冂)を与えて、1つの活動にしてかなくてはいけません。

 

安岡正篤の説明は許慎の『説文解字』に近く、「丙」を陰陽の観点から説いていますが、白川静は「丙」の字を陰陽の理によって説くことには否定的で、

器物の台座の形。また槍・杖の石づきの形。柄の初文とみてよい。(中略)卜文の字形は明らかに器物の台座とみるべきもので、商・矞・裔はみな台座のある形。丙はその小さいものである。

(白川静  『字統』より抜粋)

と説明しています。ただ、台座は「物事に意味を与える場所」、石づきは「槍などの道具を全体として完成させる部品」と考えると、形を与えていくという意味があるとみてもよいように思います。

 

いずれにせよ、あきらかに発達してくる陽気は燃えさかる炎のようなもので、そのままでは使い物にならないし、いつまでも発達し続けることはないので、その中に衰えがあることも知らなくてはいけない。

そこで、きちんと陽気に形を与えて、そのエネルギーを活かしていくということが必要であるし、また、そうしなくてはただ漫然と衰えを迎えるだけになってしまいます。

 

申 – 稲妻走り、大いに屈伸する

「申」は「のびる」という意味が強く想起される文字ですが、本来の意味は「屈伸」で善悪双方に大いに動きがあることを示します。申が俗に「猿」と解されるのも、飛び回る猿のイメージからきたものだろうと思います。

電光(稲妻)の形。申は神の初文。電光の電の下部の电は、その電光の屈折して走る形。(中略)屈伸の意がある。それが天神のあらわれる姿と考えられたので、申は神の意。

(白川静  『字統』より抜粋)

安岡正篤は「引きのばす」という意の方に着目して、同音の「身」にも通ずるとし、まっすぐに引きのばす、すなわち体を成すことを表すとも説いています。

 

「のばす」という側面から見ると、大いに伸びるが、それをよく伸びた好ましい形にしていかなくてはいけない。「かがむ」という側面から見ると、大いに伸びるということは大いに乱れうるということでもあることを知らなくてはならない。

まさに稲妻であり、その天意を活かせるかどうかが問われる文字が「申」であると感じます。

 

陽気に形を与え、活動として発展させる年

それぞれの意味を総合すると、2016年の丙申は、

思いきって発達してくる陽気を適切に囲いに入れる(かたちづくる)ことで、良い意味で大きく伸ばすべき年

ということができそうです。「乙」の障害・苦労に耐えたことで、力を持って陽気がどんどん発達してくる。その伸びる力を意義あるものにしていく必要があります。逆に言うと、

発達する陽気によい気になって伸びるままにしておくと、すでに発達のエネルギーは陰に反転し始めているため、大いなる瓦解にも繋がりうる年

ともなります。

陽気の発達は永遠ではなく、陰気へと転ずるのが道理です。しかし、せっかくのエネルギーは意義あるものとして活用していかなくてはならない。そのためには、囲いに入れていく必要があります。

 

2013年の「癸巳(きし/みずのと・へび)」で新たな活動の機運を創り、2014年の「甲午(こうご/きのえ・うま)」で新旧交代の芽を出し、2015年は「乙未(いつみ/きのと・ひつじ)」で障害の中も耐えて枝葉を切り落としてきた活動が、2016年はある意味で大きく発達しようとする。

しかし、そこで確実に形を作っていくことの大切さを説くところに干支の智慧があり、非常に面白く、また親切であると感じます。

 

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