虚なれば実を知り、静なれば正動す

虚則知実之情、静則為動者正、

虚なれば則ち実の情を知り、静なれば則ち動の正となる。

(韓非子 主道第五 一)

『韓非子』は刑名法術、現代で言う政治法律に近い学であり、その信賞必罰の思想はやや偏りがあるものの、東洋の帝王学として人気の高い書の一つです。

韓非は荀子に学び、後に秦の始皇帝に見いだされますが、韓非の才を恐れる同門の李斯らに讒言され、毒薬を飲んで自殺したという記述が司馬遷の『史記』に見られます。

 

「刑徳二柄」(刑罰と恩賞という二つの権力)を中心に据えた政治術が非常に有名な『韓非子』ですが、その思想の根底には『老子』の影響が見られます。

ここでご紹介した一節は「刑徳二柄」を正しく用いるための主道の在り方を説いたもので、正しく権力を用いるために必要な態度が逆説によって説明されてます。

 

つまり、虚であって初めて実を知ることができ、静であって初めて正動が可能になると。これは『荘子』に見られる、以下の一節にも通ずるところがあると感じます。

虚無恬淡にして乃ち天徳に合す。

(荘子 刻意編第十五 三)

実動が非常に大切なこともまた論を待ちませんが、上に立つ者は加えて虚静で以て、正しく物事を判断・処理することが求められるということだと思います。

 

私自身は実動もままならない状態ですが、自らを修める者として、心に留めておきたい一節です。

 

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瑞月
四国の香川県出身。細々としか続けておりませんが、合気道と剣術を少々しております。漢学教室で学習した内容の発信も行っています。

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