眸子より良きはなし

存乎人者、莫良於眸子、眸子不能奄其悪、

人を存るには眸子より良きはなし。眸子はその悪を奄うこと能わず。

(孟子  離婁上  十五)

「人を存(み)るには眸子(ぼうし、ひとみ)を見よ」。『孟子』に登場する、有名な人物観察法です。私の武道の師も「稽古をしていくと顔、とりわけ目が変わる」とおっしゃっていましたが、まさにその通りだと感じます。

 

孟子は、

胸中正しければ眸子も瞭(あき)らかに、胸中正からざれば眸子も眊(くら)し。

と言い、さらに、

その言を聴きて、その眸子を観れば、人なんぞ痩(かく)さんや。

と断じます。ここまで言い切れるのはさすがに達人と感じますが、目に想いが表れ、力を示すというのは感覚とも非常に合致します。

私自身は目と合わせて、声がその人の器量を示すと感じています。目が美しい、声が美しいというのはとても魅力的で、私自身もそうありたいと思います。

 

人物観察法については他にも様々なものがあるかと思いますが、呂不韋が編纂させたと言われる『呂氏春秋』には「八観法」と呼ばれる人物観察法が記されています。

1. 通ずれば、その礼するところを観る。
うまくいきだしたら、どういうものを尊重するか(金、地位、知識など)を観る。

2. 貴ければ、その挙ぐるところを観る。
地位が上がったら、誰を登用するのかを観る。

3. 富めば、その養うところを観る。
金ができたら、何を養うか(服、宝石、家など)を観る。

4. 聴けば、その行うところを観る。
その人の言葉を聴いたら、言葉と実行に矛盾がないかを観る。

5. 止まれば、その好むところを観る。
慣れてくれば、何を好むのかを観る。

6. 習えば、その言うところを観る。
何かを学んだり習熟してくれば、その人がどういう話をするかを観る。

7. 貧すれば、その受けざるところを観る。
貧乏したときは、何は受け取らないかを観る。

8. 窮すれば、その為さざるところを観る。
窮したときは、何は絶対にしないかを観る。

通じたとき、また窮したときにはその人の本性が表れます。特に、貧乏したり窮したときに受け取らない/しないことを観るというのは、人間の機微を実によく捉えた言葉だと個人的には感じます。

追いつめられると何でもするというのは必要だと思う反面、人の格としては上等ではないのではないかと。

 

ともあれ、目は常に美しくありたいものだと思います。自戒を込めて。

 

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