自ら侮りて後に人之を侮る

人必自侮、然後人侮之、

人は必ず自ら侮りて、然る後に人之を侮る。

(孟子  離婁上  八)

『孟子』の「離婁」(りろう)は有名な格言も多く、儒教の基本的な考え方を掴むのに有益な篇とも言われます。ここでご紹介した一節も、性善説の立場を取る『孟子』の思想を表した美しい一節だと感じます。

 

人は他人から侮られることを嫌いますが、その根本には自らを侮る心があると『孟子』は説きます。自らが立派な人間であろうとする矜持を失うところから、侮りが始まると。自身を省みて、非常に感じるところの多い教えです。

 

たとえ、どのような失敗であっても、失敗の本質は常に自身の中にしかないのだと思います。『孟子』の「梁恵王下」にはまた、次のような言葉も記されています。

爾に出ずる者は爾に返る。

この因果応報の思想は仏教で有名ですが、儒教においても類似の思想が根底に流れており、東洋思想の特徴の一つなのかもしれません。

 

ちなみに『法華経』には、以下のような一節が現れます。

是くの如き因、是くの如き縁、是くの如き果、是くの如き報。

同様に『正法念経』には「自業自得」と言い、『涅槃経』には「三世因果」と言われます。

 

成功も失敗も、自らの行いの結果に過ぎない。これは『孟子』だけでなく、『荀子』も同じ立場を取っていると感じます。自らの努力・行いを以てのみ、自らを高めることができるという考え方は、むしろ『荀子』の方が強いかもしれないとも思います。

 

「自らを侮らない」。これは当然のことのようで、案外に難しいことです。それは「自らを諦めない」ことでもあると思います。崩れぬ姿勢を以て、生きていきたいものだと感じます。

 

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