迷者不問路、溺者不問遂、亡人好獨、
迷う者は路を問はず、溺るる者は遂を問はず、亡人は獨を好む。
(荀子 大略編 五十四)
物事を為すとき、または苦しいとき、独りよがりになることほど愚かなことはないと知りつつ、自分の中の妄想に取り付かれることは往々にしてありそうだと感じます。
路を問えば迷うことを避けられ、遂(浅瀬)を問えば溺れることを避けられ、独善でなければ亡びを避けられる。
『荀子』はシンプルに生きる原理を教えてくれると感じますが、この一節も非常に分かりやすく、大切なことを教えてくれます。
事業を為して志を遂げるために、博く問い謀り、優れた人々の力や知恵を借りることは不可欠だと感じます。
そして、そのためには人を信頼し、自分も他人に信頼される誠実な人間であることが必要だと感じます。
ちなみに『荀子』のこの一節は君主の在り方を説いたもので、「天下にはどの国にも優れた士、賢者がいるにも関わらず、君主が知らず、博く問い謀らないことが問題である」というのが本来のメッセージです。
『詩経』にも「疑わしいときは、草刈りやきこりにさえも問う」という表現が現れ、独善に陥らないことの重要性が説かれています。
私自身も、他人と謀るということが決して得意なタイプではないので、自戒を込めて。