払ふあとよりおひ茂りつつ

事しげき  世にも似たるか夏草の  払ふあとよりおひ茂りつつ

(明治天皇御製)

まだまだ夏には早いですが、草木が芽吹く春には感じるところの多い歌です。

 

世の中というものは、とかく繁(しげ)きものです。「繁栄」という言葉に「繁」という文字が含まれるように、栄えることと繁雑であることは通じるところがあります。人間の心も活動的であるばあるほど、とかく騒がしく繁雑であると感じます。

 

「繁」という字は「敏」と「糸」から成ります。「敏」は髪飾りに手を添えている婦人の姿を表し、さらに糸飾りを付けていることから髪飾りが多い様子を示し、「おおい、さかん」という意味となると言われています。

「繁る」という状態は、自然の必然ではありつつ、やや多すぎるという印象を与えます。

 

以前に「省」という字についての記事を書きましたが、繁雑なものをきちんと省いていくことで、適切な状態が保たれるのだろうと思います。ただ繁るだけでは、やはり人の心も、集団の感情もなかなか正常を保つことができるとは言い難いと感じます。

 

温暖な日本においては放っておくと草が繁るように、人間が自然の摂理に従って生きたとしても、どうしても「繁」が生じてしまうのだろうと思います。そういう意味で、「払い(祓い)」を必要とする宗教観は日本の国土に根付いたものであると感じます。

 

「栄えてなお、繁らない」。自戒を込めて、そういう心を持ちたいものだと思います。

 

よみがえる昭和天皇―御製で読み解く87年 (文春新書)
辺見 じゅん 保阪 正康
文藝春秋
売り上げランキング: 520,640

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です