つもるにつれて道を失う

欲深き  人の心と降る雪は  つもるにつれて道を失う

(高橋泥舟)

幕末三舟の一人で、三舟の中でもっとも高潔ともいわれる高橋泥舟の歌です。

 

槍術の天才であり、徳川慶喜に絶対的に信頼された高橋泥舟は、明治の世の訪れとともに旧主にならい隠棲します。その進退を表現して詠った歌もまた、ユーモアに富みつつ、泥舟の器の大きさを感じさせます。

狸にも  あらぬ我が身もつち舟の  こぎいださぬがかちかちの山

童話の教訓を引用しつつ、泥舟の価値観を見事に感じることができます。

同じく三舟の一人、勝海舟は高橋泥舟の愚直さを「泥舟はおおばかだよ。とても才子じゃできない」と、彼らしい皮肉で評価しています。言うまでもなく、この歌が彼の号である「泥舟」の起源です。

 

冒頭でご紹介した歌も、平易な言葉で人間の心の弱さを見事に表現していると感じます。我々は欲深き心を戒めるとともに、自らの心が散らかってしまわないように、常に祓いをする必要があります。

 

人間の心は弱いもので、東洋の処世術の最高峰といわれる『菜根譚』には次のような一節もあります。

善をなして、人の知らんことを急ぐは、善処すなわち是悪根なり。

(菜根譚  前集  六十八)

高潔とまではいかずとも、心は清くありたいと強く思います。

 

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